株式会社CBTソリューションズ 代表取締役社長 野口 功司
1973年、宮崎県生まれ。小学3年生のときに「経営者になる」と決意し、大学卒業後8社でエンジニア、営業、マーケティング、法務、人事、役員などを経験したのち、起業。CBTソリューションズを立ち上げる。
株式会社CBTソリューションズ(CBT-Solutions)
2009年創業。資格試験をIT化し、全国どこでも試験が受けられるシステムを展開。国内シェア80%以上、年商100億円。
業界をリードし続けるトップランナー。
資格取得の機会をすべての人に
教育やビジネスなど、さまざまな分野で必要とされる資格試験。みなさんも、人生の中で何らかの資格を取得した経験があるのではないでしょうか。私が創業したCBTソリューションズの事業の柱は、誰もが自分の好きな時間に、自宅近くの会場でコンピューターを使って試験が受けられるCBT(Computer Based Testing)というサービスです。
かつて、資格試験といえば、ほとんどが年に1回だけの開催。しかも主要都市でしか実施されませんでした。都市部に住む人と地方に住む人の間に、大きな不公平が存在していたのです。
私は宮崎県都城市の出身です。子どものころは福岡まで行かなければ試験が受けられませんでした。しかも、九州山地で分断されているため、福岡まではバスで6時間もかかります。
沖縄県に住んでいる人だと、海を渡らなければならないこともあります。小笠原諸島に住んでいる場合、東京都心までセンター試験を受けに行くのに10日がかりの泊まりがけです。教育だけでなく、宅地建物取引士や電気工事士など、ビジネスにかかわる資格も無数にあります。天災などの事情でこうした試験会場にたどり着けなければ、その人は次の試験まで仕事自体ができなくなってしまいます。ただ地方に住んでいるというだけで、ここまで機会が奪われてしまうというのは、なんという理不尽でしょう。
こうした機会の不均衡を、ITの力で是正したい。私たちはそのような思いから、CBTのシステム開発と普及に取り組んできました。
創業から15年。CBTソリューションズは日商簿記、FP技能検定、漢字検定、秘書検定など300以上の試験の運営およびシステム構築を行っており、さまざまな社内試験や採用試験でも活用されています。テストセンターは全国47都道府県に360カ所以上を設置し、石垣島や宮古島などの離島などもカバーしています。
サービス内容も、システムを提供するだけではなく、試験の申し込みから受験料の回収、試験のCBTでの実施、採点、合格証明書の発行、受験者のコールセンターサポートなど資格試験に関するあらゆる工程をカバーするオールインワンのサービスへと進化しています。従来のように紙ベースで一つの会場に大人数の受験者を集める試験に比べ、印刷費や会場設営費、人件費などの負担を大幅に減らすことができるため、主催団体の側にも大きなメリットを提供することができています。
「受験者の利便性」と「団体のコスト削減」を同時に実現することで、いまではCBT業界において80%以上のシェアを獲得するに至っています。
小3で経営者をめざし、夏休みは近所のパソコンショップに入り浸り
「経営者になりたい」。最初にそう思ったのは、小学3年生のときでした。
道徳の授業で、「人間の生きる意味とは何か?」という、とても9歳の子どもへの課題とは思えないような問いが出されたのです。
授業中には何も答えられませんでした。クラスメートがこの問いにどうやって答えを出したのかはわかりません。ただ、とにかく自分には、その場で答えが出せなかった。そのころからすでに、いったん取り組んだら何でもとことん突き詰めてしまう性分だった私は、道徳の授業のあと、考えに考え、三日三晩眠れなくなるほど悩みに悩み続けました。
考え抜いた末に導き出した結論は、「人間は生まれたときから価値を持っているんじゃない。生まれた後、どんな行動をとったのかによってその人の価値が決まる」というものでした。
「人は、努力次第でいくらでも価値を生み出せる存在なんだ。それなら、自らも素晴らしい人間になろう」と、そのとき心に決めたのです。
では、どんな道を選べば自分の理想を実現できるのか。最後まで迷ったのは、政治家になるか、経営者になるかです。
いろいろなニュースを見ていて、「たとえ政治家であっても、一人で何か大きなことができるというわけではなさそうだ」と、子どもながらに感じていました。日本の政治家のトップは、内閣総理大臣です。その内閣総理大臣でさえ、できることがずいぶん制限されているように思えたし、国を変えられるとは思えなかったのです。